脳梗塞およびその後遺症、便秘との意外な関係
脳梗塞の後遺症の一つとして便秘があげられます。
また、脳梗塞を引き起こす原因として便秘が関係していることをご存知でしたか?
今回は、便秘により脳梗塞になる理由について、そして脳梗塞になってしまうと便秘になりやすいメカニズムについて説明させていただきたいと思います。
これらの知識を身につけることにより、少しでも便秘が原因で脳梗塞になる方を少なくし、不幸にして脳梗塞になってしまった方の便秘を減らすことができれば幸いです。
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目次
脳梗塞の後遺症と便秘との関係
脳梗塞の後遺症として排便障害(便意を感じない、排便を我慢できない、お腹に力を入れていきめないなど)を起こすことがあります。
まず、排便のメカニズムについてですが、
- 直腸に便がたまってくると直腸の壁が押され、その刺激が大脳に伝わり「便意」を感じます。
- 「便意」が起こると腹筋を収縮させ(いきんで)、便を押し下げ、肛門の内肛門括約筋が副交感神経によりゆるみます。
- 次に自分の意思により、肛門の外肛門括約筋をゆるめることにより排便となります。
このような排便メカニズムに脳梗塞の後遺症が影響して、便意が大脳に伝わらない、腹部に麻痺があっていきめないなどといったことが起こり、便秘となることがあります。
便秘というのは、健康な人にとっても厄介なものです。
脳梗塞の方にとっては、健康な人以上に様々な身体への悪影響を及ぼしますので大問題となってしまいます。
便秘だと安易に考えずに真剣に取り組む必要があるものだと思います。
脳梗塞の後遺症で便秘になったら、食事で腸内環境の改善を!
脳梗塞の後遺症で身体に麻痺が残る方も多いようです。
このような方は健康な人より便秘になりやすく、理由としては、麻痺による運動不足、精神的なストレス、腹筋に力が入らず上手くいきむことができないなどがあげられます。
しかし、安易に便秘の薬を飲むこともおすすめできません。
一つは便秘の薬は長期間の服用には適していないこと。
もう一つは薬による排便は急に便意がもよおしてくることが多く、身体に麻痺のある方には迅速な対応が難しいことなどからです。
このような場合には、食べ物により腸内環境を整えて、便秘になりにくい身体つくりをおすすめします。
まず、便秘対策といえば食物繊維。食物繊維には2種類あり、一つは水溶性の食物繊維で、これは腸内細菌の善玉菌を増やす作用があります。
もう一つの不溶性の食物繊維は、便の量を増やしたり、ぜん動運動を活発にすることにより排便を促します。
しかし、不溶性の食物繊維を摂り過ぎると、かえって便の排出を阻害する場合がありますので、注意が必要です。
便秘が脳梗塞の引き金になる理由
便秘がどのようにして脳梗塞のリスクを高めているのか、その仕組みについてですが、まず便秘になるともちろん便は出にくくなります。
そのため、排便の際に強くいきむ(りきむ)ことになり、この動作が一時的ですが血圧を大きく上げることになります。
もし高血圧の方が排便時にいきむことにより、さらに血圧が高くなると脳梗塞や脳出血の危険性が極端に高まります。
そして、特に冬場のトイレの状況を考えていただくと、高血圧の方には悪い条件が重なっているので充分な注意が必要です。
高血圧の方は、たかが便秘と侮らないでください。便秘があなたの身体の自由やさらには命を奪うかも知れないのです。
ですので、高血圧の方は特に便秘にならないよう日頃から食事(特に食物繊維。水溶性と不溶性食物繊維のバランスも大切)や生活リズム、適度な運度などが大切ですので、普段からの生活に気をつけて過ごすようにしてください。
脳梗塞の後遺症に悩まないための便秘の排便法
高血圧の方には特に注意していただきたいのが、便秘時の排便法です。便秘の時にいきむと血圧がさらに上がり、脳出血や脳梗塞になる危険性があるのはご存知だと思います。それでは便秘になって出にくくなった便をどのように排便するのがよいのでしょうか。まず排便時の姿勢ですが、ロダンの「考える人」のポーズが直腸の曲がり具合がゆるみ、便が通りやすくなるようです。次に呼吸ですが、息を止めていきまないことが大切です。赤ちゃんの出産と便秘の出にくい便を一緒にして申し訳ないのですが、ラマーズ法での呼吸法が便秘などの出にくい便の排便に応用できるのです。あの有名な「ヒッヒッフー」です。もしこれでも便が出ないようなら最後の手段。NHKのためしてガッテンでも紹介された「ぬるま湯法」別名「絶対排便力」の出番です。これは薬剤ではなく、ぬるま湯をイチジク浣腸の容器などに入れて浣腸するものです。薬剤の副作用も無く、自力で排便することを目的としているものです。
脳梗塞の前兆を見逃さないで!
脳梗塞というのは、ある日突然起こってしまうものだとお考えの方が多いのですが、前兆というものが現れている場合もあります。
この前兆の段階で病院に駆け込めば、脳梗塞を発症せずに回避できるのです。
さて、その前兆ですが、原因不明の頭痛や肩こり、めまいや耳鳴り、手足のシビレ・震え、歩き方がフラフラする、階段などで片方の足がよく引っかかる、指先が思うように動かせないなどです。
また、脳梗塞の初期症状として、一過性脳虚血発作が見られる場合があります。
これのチェック法として「FAST」と呼ばれる標語があります。
F:Face(顔の麻痺)
A:Arm(腕の麻痺やしびれ)
S:Speech(言葉の異常)
T:Time(躊躇せず119番)
というものです。
これらの前兆やFASTに当てはまるような症状があれば、直ぐに病院へいきましょう。
前兆は一時的なもので、時間が経てば症状が改善するため、安心してしまうケースも多くあり、受診のタイミングを逃してしまうこともあります。
脳梗塞は時間との勝負です。発症から3〜6時間以内に初期治療を開始する必要があり、この初期治療により劇的な効果や後遺症の大幅軽減も期待できるのです。
脳梗塞の危険因子とは
脳梗塞の発症予防(再発を含む)のためには、脳梗塞の「危険因子」を知っておき、その対策を講じることが大切とされています。
その危険因子のうち、最大のものは加齢と高血圧です。つまり血圧を下げることが最も効果的な脳梗塞(および脳出血)への予防法になります。
ここでは、これ以外の危険因子についてもお話したいと思います。
(脳卒中治療ガイドライン2015年版より)
- 高血圧:140/90mmHg未満を目標血圧値としています。下の血圧を5mmhg下げるだけで発症率を4割も減少できるとの事です。
- 糖尿病:高血圧に次ぐ危険因子で、血液中のブドウ糖が動脈硬化を促進させてしまい、血管を痛める病気といえます。
- 脂質異常症(高脂血症):血液中の脂質(特にLDLコレステロール)は、血管を詰まらせる原因になります。
- 心房細動(不整脈):心臓の心房に生じた血栓が脳の血管に詰まり脳梗塞となる可能性があります。
- 喫煙:本人が喫煙する以外に受動喫煙についても注意が必要です。
- 飲酒:大量飲酒の習慣は発症リスクを高めますが、ビール1本程度(350ml/日)では発症率が低下することが確認されていますので、適度な飲酒はOKです。
- 全身の高い炎症状態(CRP値):健康診断の炎症マーカー(C反応性蛋白:CRP値)として表され、代表的な炎症マーカーとしては白血球数(WBC)、血小板数(Plt)などがあります。
脳梗塞の再発予防によい食べ物は
脳梗塞の危険因子としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症が三大危険因子といわれていますので、これらに対して良い食べ物ということになります。
(いわゆる生活習慣病への対策です)
1)高血圧:塩分の摂取がポイントです。また体内の塩分を排出する働きのあるカリウムを含む食品(海藻類や果物)を心がけてください。
2)糖尿病:過食やまとめ食いを止め、食べる量、栄養のバランス、食べるタイミングに注意してください。
3)脂質異常症:コレステロールの多い食品を控えるのと、コレステロールを下げる働きのあるDHAやEPAといった多価不飽和脂肪酸の多い食べ物(ブリやサンマなどの魚類)の摂取に心がけてください。
また、これら以外に共通しているものとして食物繊維の摂取も重要です。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、それぞれ体内での働きが異なりますので、これらの食物繊維をバランスよく摂ることが大切です。
まとめとして、食べ物としては「塩分」「糖質」「コレステロール」の3つについて注意してください。